地域猫の国もくじ、p-2〜p-4にも関係しますが、地域猫対策「2つの現場」は極めて大切なポイントです。地域協働大臣の推す、役所・住民・ボランティア三者協働の現場の自治活動と、養育福祉大臣の推す、猫の個体の養育・福祉・擁護活動の現場を並べると、特に後者に関係する各種勢力分野の思惑が強く反発し合います。
地域猫対策にT:トラップ(捕獲)N:ニューター(手術)R:リターン(返還)は欠かせません。その中でも不妊去勢手術のコスト面に注目が集まります。
公共、公益サービスの執行官である役人の目線で、極端な2つの相反する勢力分野の事例を、仮に(A)と(B)とします。
(A)地域猫対策に理解が有り、野良猫の手術にも精通し、自らもTNR活動に参加しながら開業している獣医さんがいます。この獣医さんが、役所に地域猫対策と手術費用助成事業を求めるとき、反対勢力からこの獣医事業者に対する、役所の「便宜供与」を疑われてしまいます。
(B)役所には獣医資格を持つ職員がいますから、センター(動物愛護・保護・管理・相談などの…)で、不妊去勢手術を行えますし、一部では行われています。しかし、このような仕組みの協議を試みようとする役所には、早耳で聞き付けた反対派勢力から「民業圧迫」の申し立てが起こります。大きな理由は、民間で行うべき手術医療や養育介護などの商業分野が圧迫されるというものです。
事例(A・B)は極端な例ですが、地域猫対策の現場にはすごく多くのさまざまな立場が関係し、参加します。便宜供与や民業圧迫は商業分野の権益で計ることができるかも知れません。また、目に見え易い環境保全と違い、動物の命を慈しむ思いや行いは、理念に後押しされることも多いものです。理念の活動に、営利や打算は通用しにくくなります。地域猫対策をすすめる役人は、このような現実から逃げること無く、誤魔化さずに、腹を括って上手に対応できる度量と、いくらかの裁量も必要と思われます。(初稿・'13.3)
[コラム](A)に似たケースでは、野良猫の手術に評判の高いところには、通院も多くなります。このため助成金の恩恵の低い同業他者から、役所に苦情が申し立てられます。このような対応について、役人は前もって心掛けておくことになります。既に体験している他の自治体の事例なども参考になっているようです。
(B)では民業圧迫がほとんど話題に上らない事例もありますが、一旦その声が上がり始めるとかなりやっかいです。商業分野からだけではなく、獣医資格を持つ職員(役人)の、野良猫の手術についての知識や技術の問題や、通院する市民との関係づくりなどが、少なからずの課題になることもあります。民間の開業獣医師が、センターに出張するなどの解決策も試みられているようです。 |