新宿区・補助金等検討委員会の提言書について…
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新宿区長 中山弘子殿


新宿区補助金等審査委員会「人と猫との調和のとれたまちづくり」について

 人と猫との調和のとれたまちづくり・地域猫対策事業の推進に感謝申し上げます。
 野良猫対策は、単に動物愛護の観点から、猫の健康や福祉を保つだけではなく、生活環境にいる猫に起因し、住民の間の大きなトラブルとなるさまざまな生活侵害苦情の解決につながります。新宿区の当該施策の推進は、都内や近郊行政にとどまらず、広く全国の規範として注目されています。
 区民のコミュニティ保全継続のためや、下記の事項について、格段のご配慮をお願いいたします。

                    記

 公開されている、平成16年7月27日の新宿区補助金等審査委員会会議概要によると、野良猫の発生を、猫の飼い主の責任に限定し、既に発生している野良猫対策に係わる補助金等を、問題のある制度、としています。
 さらに、犬に適用される根拠法を、猫にも遵用し審査(※注1)するほか、条例の前段となる法令等の精査に基づかない条例案(※注2)である、室内飼い猫徘徊禁止罰則付条例の提案や、国の所管から自治体の措置として通知されている、所有者の判明しない猫の飼養希望者の発見の努め(※注3)を、一義的に区民に求めるなど、行政施策の手引きとなる審査内容に疑義が生じます。

 野良猫の発生は、猫の飼い主責任に限らず、ねこを所有あるいは占有し、もしくは取扱う者などの作為によることも知られています。例えば、単一猫種の多頭数遺棄や、終生飼養を目的としない、反復継続する繁殖などやそのほかです。
 飼い主責任の徹底も要因のため、従来より区では、飼い主への普及や啓発を施策としているものと考えます。具体的には、繁殖制限、適正飼養、終生飼養に努め、遺棄・殺傷・衰弱虐待犯罪を防止するなどです。その他のモラル規範として、室内飼育や身元の表示も啓発されていますが、それぞれの実行は周知徹底されません。
 実行の周知徹底を目的に、法令等に基づく条例制定の場合、個人飼い主に限らず、猫を取扱う者、または所有、占有する者の規制等の強化であることを、国の議会でも決議しており(※注2)、先決と考えられますが、それらは当該審査会議の課題である、野良猫への去勢・不妊手術費とは異なります。

 区では、東京都・飼い主のいない猫との共生事業の浸透をうけて、地域猫対策を策定しています。この施策は、区民の猫に係わる小さな作為が、限られた地域のコミュニティに、やがて大きくマイナスに作用し、地域を広げて、その範囲の及ぶ事態の抑止も目的です。
 小さな作為に起因して、既に徘徊を始めた野良猫に、去勢や不妊手術の繁殖制限を施し、区民のコミュニティの中で、主に近隣の人間関係を修復しながら、国家的な事業でもある、生物多様性と環境との関係を、身近なねこに学ぶことも行われています。
 法令等に基づく場合、猫の飼い主などの小さな作為に対する、罰則のある条例制定は困難です。
 猫を飼い、あるいは取扱う区民も、野良猫の徘徊するコミュニティで共に生活します。地域を区切りながら、地域住民の合意や理解を得て成立する地域猫対策を行うことにより、猫の適切な飼い方にとどまらず、動物に接するすべての区民に対して、罰則のある条例以上に、人と動物との適切な関係づくりの普及や啓発が行え、根付きます。

 野良猫への去勢・不妊手術は、地域猫対策事業計画に欠かせません。また、この事業は、やがて飼い主や取扱う者などへ、適切に周知徹底のはかられる際に、無制限に継続されるものでもありません。
 全国の規範となる、人と猫との調和のとれたまちづくり事業の、推進抑止に強く作用する審査内容を、新宿区民のみならず、悲しく思います。

以上、その他の意見のある場合は別紙を添えて、下記に署名し、ご検討をお願いいたします

平成   年   月   日

住所

氏名

※注1. 狂犬病予防法の登録制度や鑑札票などの装着、犬の係りゅう(引き綱)は、ねこに適用していない。
※注2. 条例の前段に位置付けられる動物愛護法やそのほかの法令にも、ねこの「屋内飼育」に罰則を付けて条例化できる根拠が希薄。一方、動物取扱い業の規制強化条例は、参考例をあげて、動物愛護法公布時の議会付帯決議にある。また、法に準拠した「罰則付き繁殖制限条例制定案」は、動物取扱業ほか動物産業に配慮すると思われ成立しない。
※注3. 昭和50年に総理府から、各都道府県知事などに出された、総管第237号の(通知)の第2項。(※要約/収容動物の、飼養の継続、飼養希望者の発見に努めるなど、生存の機会を与える。)


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