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● 行政指導の落とし穴 ●


●各地から寄せられた疑問を検証しています。 (07.08.up)

メールマガジン「どーぶつネットにゅーす」Vol.68に関連する経過情報の頁です。



●「動物愛護法の対象となる動物」についてよせられたご質問に基づいています。

 不適切な行政措置と思われる事例に巡り会うことがあり、数々の疑問が生まれます。行政マンが措置を行う元になる条例や広報資料などが不適切の原因と思われる際には、疑問に対して納得のできる回答も望みにくくなります。
 条例の改廃などに近い立場の議員に、改善の道案内をお願いする際には、不適切と思われる原因を議員に説明する機会もあります。この頁の内容は、議員さんへの説明の主旨を兼ねています。


 動物の所有権利や所有者責務などと、人と関わりのある動物と人との関係などについて、「野良ねこ問題」が身近で分かりやすいので「野良ねこ」を参考例にあげながら「行政指導」を調べました。

【事例A】動物愛護法をイラスト入りで解説した冊子パンフレットに、同法の対象となる動物を「人が飼っている全ての動物」と明記していたことについて‥‥

【事例B】野良ねこを傷つけようとしている人を見たので警官に伝えたら「飼いねこじゃないから‥」といわれたことについて‥‥

【事例C】条例の「飼い主」の定義に「一見して飼い主と思われる場合も含む」という意味の記述があるため、この行政では野良ねこ対策を思う人々に「飼い主権利の取得」を強く求めます。その結果、棲んでいる野良ねこを対象にする「野良ねこからの迷惑侵害対策」の行政対応を行えなくなっていることについて‥‥(※類似の地域行政が多数のため事例をまとめました。)

動物愛護法では、動物の所有者や占有者の責務などを決めていますが、出産を除く成体動物の所有や占有の権利を得るまでの状況や過程を決めていません。既に所有や占有の権利を持つ人々を対象にしています。
更に同法では、犬やねこを含む11種類の動物を、所有者や占有者の有り無しに関係なく「人と関わりのある愛護動物」と決めています。

※【事例A】動物愛護法をイラスト入りで解説した冊子パンフレットの発行者である環境省の所管とは、おおむね次のような合意が得られています。
●動物愛護法の対象となる動物を「人が飼っている全ての動物」と明記しことについては‥‥
 同法では、「人の環境に棲まない野生動物などを除き、人と関わりのある動物が想定されているので『人が飼っている』、とした。そのことで不適切な事態になるときは、そのほかの適切な対処を否定しない。」‥、というものです。
 人が飼っていなくても、人と関わりのある法令上の愛護動物は対象になると判断されます。

※【事例B】の場合には、「飼いねこじゃないから、殺傷犯罪にならない」と判断した警官の対応が不適切であり、野良ねこも動物殺傷犯罪の対象です。
 このケースでは、事後に警察と対応の不適切さへの合意が得られました。
 また警察からは、同法違反の適切な普及や啓発を、警察所管に限らず行わなければならないとする見解の表明もありました。動物愛護法違反者を生み出さないための普及啓発を、行政の関係機関のみならず、民間も協力して進める方法を警察も示唆しました。
※【事例B、そのほかの例】「野良ねこを捕獲して、遠方に置き去りにしても遺棄違反にならない。」「室内の飼いねこが増え過ぎたので、何頭かを戸外に放置して飼育を放棄しても遺棄とはいえない。」なども現場の警官の不適切な判断事例です。いずれの場合にも管轄の警察とは事態の適正化に向けた折衝が行われますが、警察のみならずさまざまな機関や機会を利用する愛護動物の法律違反の普及や啓発を警察からも求められています。

※【事例C】の場合には、冒頭の冊子パンフレットのそのほかの記載ページも影響を与えました。「飼い主のわからない犬やねこを都道府県等が引き取りを行う」という記載です。
 狂犬病予防法の犬の全頭登録制度により、原則として飼い主のわからない犬は法令上いないことになるため、飼い主の分らない犬の引き取りを都道府県等が行います。
 犬と異なり、法令にねこの登録制度がありませんから、飼い主のわからないねこが多数います。法令では、ねこの引き取りについて「やむを得ない事態による、飼い主の緊急避難的な所有権の放棄」などと位置付け、飼い主のわからないねこの無条件引き取りは不適切な記載です。
 地域行政担当は、冊子パンフレットのように、迷惑侵害を及ぼす飼い主の分らない野良ねこの無条件引き取りを、ねこを迷惑と訴える市民に指導していましたが、不適切との指摘により改めました。

※【事例C】の所管では、動物愛護法の対象となる動物を「人が飼っている全ての動物」と不適切に理解した結果、愛護動物施策の対象動物を「飼われている動物」としなければならなくなりました。
 条例の前段とされる動物愛護法に「動物」を決めた条文が無いので、同法上の動物は「人と関わりのある動物」と想定されています。「人と関わりのある」を拡大解釈し、法令を逸脱して動物を「人が飼養する」と条例で決めました。
 更に条例では「飼い主」を「動物を飼養する者」と定義した上で、「飼い主の責務」の条文に「飼い主とは‥、飼い主と同一視される者を含む」としました。
 動物愛護法では、飼い主つまり所有者や占有者に至るまでの経過や状況や態様を決めていません。同法は、飼い主のいない動物へ対する、人の行為の経過や状況や態様に基づいて、所有や占有の権利の取得を判断していません。飼い主のいる動物に関しては、既に所有や占有の権利義務を得ている者を対象にしています。
 動物個体が持つと思われる資産的価値の権利取得などに関しては同法の分野と異なるため、飼い主と同一視される者への、取得権利の授与などを、愛護動物の条例で定めることが不適切と判断されています。
 例えば、逸走またはリードを外した高額流浪犬の拾得や、皮革使用目的の愛護動物狩猟などの際に、状況や経過から「飼い主と同一視」とみなされる態様がとられた際に、所有や占有の権利が発生してしまい、条例に従った新たな所有権利者と判断され得る恐れを含みます。
 また、万が一飼い主の行為と同一視される場合にあっても、動物取得の権利を求めない者に対する、動物の終生飼養に係る責務などの負担を強く指導する際には、行政裁量権の逸脱と判断されます。

 【事例C】の所管では、この条例に基づいて野良ねこ対策を進める結果、持ち主のいない野良ねこの餌を差し出す不特定多数の市民を対象に、野良ねこ所有の権利取得と、適切な終生飼養の負担を強く求めるなどの、「飼い主限定」施策をとらざるを得なくなってしまいました。
 自ずと、持ち主や飼い主のいない野良ねこからの迷惑侵害対策の対象も、餌を差し出す不特定多数の人々に限られるため、対策の実行対象者が定まらないことから、対策を行うにあたっての主体者を決められないまま、そのほかの多数の野良ねこも対策の対象から除外され、具体的で現実的な野良ねこ迷惑被害対策の行えない結果に至ります。
 野良ねこは飼い主がいなくても同法上の愛護動物ですから、処分目的の駆除もできません。持ち主のいない有体物のねこを対象に、人の持ち物権を容易に与えることは行政裁量権を超えます。この所管の条例の対象は飼い主のいる動物ですので、野良ねこ被害対策を打ち出せなくなります。

 一度決定してしまったパンフレットや条例の改廃は容易くありませんが、公平な視点からも不適切さが合理的に判断される際には、それらについての改善要請行動を必要とする場合もあると考えられています。(平成19年8月初稿・AWN連絡会)


●AWN連絡会の共同代表から、複数の行政機関などに提示された「疑義教示のお願い」を元に編纂しました。
●人が飼っている動物対策と、人に飼われていない持ち主のいない動物対策の執行に関して、条例や公的な広報ペーパーなどの不適切な際には、改善を求める動きもあります。

※この頁は || 野良ねこ問題 || と関係しています。
※そのほかの関連項目は || 【Q&Aコーナー】もくじ || AWN連絡会などに寄せられるご質問より



【参考資料の過去ログ】 ※動物愛護法・改正新法施行以前のご参考です。
東京杉並区の条例計画の混乱について 07.03.up
いま必要な条例はなに?という地域行政からの問いかけに対して03.01.up
世田谷区における人と動物との共生に関する考え方、ペット条例制定のご質問に対して







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