Q&A コーナー
  アニマルウエルフェア連絡会

※お問合せへ、概略のみですがご案内いたします。2009.h21.07.28up


愛護動物ご担当者さまへ
「動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドライン」を作るために・・・

●環境省のパンフレットと自治体条例の問題点

アニマルウエルフェア連絡会ブログ
法でいう「愛護動物」とは… (06/12)
アニマルウエルフェア連絡会メールマガジン「どうぶつネットにゅーす
などに関連してアニマルウエルフェア連絡会に寄せられたご質問、お問い合せより

■「所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドライン」の参考見本。
クリック→ | 所有者のいないねこの適正管理の在り方等についてのガイドライン『要綱』 | pdf/10k/A4モノクロ3頁
h21.7.28up


ご質問、お問い合せ内容を要約すると、『動物愛護法(但し略称)の基本指針(同・略称)に従い、所有者のいない動物を対象にした、愛護と管理の両面を目指すガイドラインを私の行政は作成しませんし、施策としても行いません。』
・・・おおむね、そのような内容です。

 そのような自治体でとられている施策の例では・・・
所有者のいない動物に、新しい所有者や管理者を与える。(注1)
新しい所有者や管理者に対して、飼養者責任の事項を決める。(注2)

(注1)所有者のいない動物を対象に、その動物の所有権を与える権限を原則として役所は持ちません。センター等では引き取られた動物の「譲り渡し」を行っていますが、保護管理の権利義務が一時的に発生している役所からの「保護管理の権利義務」の譲り渡しと考えられます。問題解決を困難にしている対象の動物は、役所で保護管理されている以外に生息している所有者のいない愛護動物です。
(注2)飼養者としての権利を与える権限を持たない役所が、新しい所有者や管理者を想定して義務を与えようとする「机上の考え」に基づいて極めて強い行政指導を画策します。想定される理論上の飼い主は当初より存在していないので、行政指導に基づいた執行ができません。
 また、飼い主と「みなし」たい行為者を「所有等の権利を有する者」に特定する際には、その人を飼い主と「みなす」側に立証の義務があるため、行政の民事不介入の原則を保てません。


(注1)や(注2)のような実効性の少ない施策の行われるようになった主な原因が、2つあります。環境省のパンフレットと自治体条例です。

 動物愛護法では、同法でいう「愛護動物」を次のように決めています。
同法第44 条 第4項
前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

 1項にある11種の動物は人に飼われていなくても「愛護動物」ですが、環境省が発行するパンフレット「動物の愛護及び管理に関する法律のあらまし」には、「対象になる動物」として「人が飼っている全ての動物」と定義されています。
 このパンフレットには、そのほかの頁にも都道府県の引き取り対象動物が、法律の規定と違う解説などのほか、複数の間違いや疑問が当連絡会によせられていました。
 当連絡会で疑義を6項目に集約し、平成19年8月1日付けのAWN連絡会疑義教示文No.801として環境省動物愛護管理室長宛に提出し、担当官より同年8月8日に口答で「増刷などの際には検討する」旨お返事をいただきましたが、未だ改訂はされていないようです。
 各市区町村の、法令の執行官である愛護動物担当が当パンフレットに従って施策を検討し、措置を指導する際に、「法律が対象にする動物は人が飼っている動物」に限定されます。
 その結果、『所有者のいない動物に、新しい所有者や管理者を与え、新しい所有者や管理者に対して、飼養者責任の事項を決める』という考えが主流となりました。
 都道府県等は「所有者の所有権の放棄による緊急避難措置」として犬とねこの引き取りを行いますが、このパンフレットでは飼い主のわからない犬とねこの引き取りも無条件です。不適切な解説の多いパンフレットには速やかな改訂が望まれます。



 自治体条例の中で、東京都条例は「動物」の定義を既に改正していますが、都条例を見本にして作った多くの条例のほとんどが未だそのままです。改正前の都条例では次のように用語を定義していました。
(定義)第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 動物 人が飼養(保管を含む。以下同じ。)する動物で、ほ乳類、鳥類及びは虫類に属するものをいう。
三 飼い主 動物の所有者(所有者以外の者が飼養する場合は、その者を含む。)をいう。

 現在の都条例に上の条項はなくなっています。また「飼い主」を(動物の所有者以外の者が飼養し、又は保管する場合は、その者を含む。)と改正し、所有者のいる動物を所有者以外の者が飼養保管する場合の「飼い主」、という判断をしやすくなっています。
 現在も旧都条例と同様の項目のある条例を持つ自治体では、対象の動物を「人の飼養」に限るため、所有者や占有者や取扱者のいない動物を対象にする施策を行えません。このような条例を持つ自治体にも速やかな改正が求められています。


 所有者や占有者や取扱者のいない動物は全国各地に生息していますので、何らかの対策を行わざるを得ないのが現実です。そこで役所の現場では「所有者以外の者が飼養する場合」を拡大解釈して、「給餌の行為」と「飼養」に係る権利義務の一体化を図ろうとします。しかし、「給餌」と「所有の権利義務」の因果関係の証明は、民事上で争うことになり、行政民事不介入の原則を侵します。
 毎日餌をやっている小川のアヒルがその方の所有物ではありませんし、「毎日餌をあげているあなたのアヒルをお家に連れ帰りなさい。」と強制する権限をだれも持ちません。但し、当初から所有しているアヒルに小川でエサをやる場合や、毎日お家に連れ帰っているアヒルの場合には事情も違ってきます。



 多くの市民が不思議に感じる、「餌をやる人が、飼い主だ。」への異論は、古くから続く「行政の逸脱した指導」の結果ともいえます。「餌をやっても飼い主じゃなかったら、迷惑被害はどうなの?」。外来動物が人に飼われて愛護動物になり、人の手から離され人の環境で自由に棲息を始めたアライグマ・タイワンリス・フェレットなども問題ですが、ことさら身近で大きな問題は野良ねこです。ねこに詳しい当連絡会のメンバーには毎日数件もの問い合わせが途切れないとのことです。

 各地方自治体が、動物愛護法第5条の基本指針(但し略称)にしたがって「動物愛護管理推進計画」を策定しています。この計画の中でも多くの自治体に混乱が広がっています。飼い主のいない野良ねこに対する、「動物の愛護と管理の両立」という課題です。
 東京都のように飼い主のいるいないに関係なく「愛護動物」を対象とする際には、「飼い主のいないねこ施策」が行えます。動物を「人が飼養」と条例で決めている際には「飼養者のいないねこ対策」は自ずと困難です。


 動物愛護法の「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(=基本指針)」から、動物の「愛護」と「管理」を要約すると・・・

第1 動物の愛護及び管理の基本的考え方
(動物の愛護)【抜粋引用】〜〜〜動物の命に対して感謝及び畏敬の念を抱くとともに、この気持ちを命あるものである動物の取扱いに反映させることが欠かせないものである。〜〜〜命あるものである動物に対してやさしい眼差しを向けることができるような態度なくして、社会における生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養を図ることは困難である。

(動物の管理)【抜粋引用】〜〜〜また、所有者がいない動物に対する恣意的な餌やり等の行為のように、その行為がもたらす結果についての管理が適切に行われない場合には、動物による害の増加やみだりな繁殖等、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要がある。

第2 今後の施策展開の方向 / 2 施策別の取組 / (3)動物による危害や迷惑問題の防止
 A講ずべき施策 ア 【抜粋引用】 〜〜〜都市部等での犬やねこの管理の方法、所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドラインを作成すること。 ・・・などやそのほかです。


 法律による指針の解釈をある自治体は、あろうことか法の精神を逸脱して下記のようにしてしまいました。
【※所有者がいないねこに対する恣意的な餌やりとは : 所有者の不明なねこに対し、その場限りで餌をやり、適切な管理を行わず、周辺環境の糞尿による汚損やみだりな繁殖等を引き起こし、周辺住民の動物への愛護意識の低下につながる行為のこと。】
 このような定義は行政による「机上からの取り締り」が行いやすい性悪説の理論に基づくため「動物愛護の観点」が外された上、行政の施策は「餌やりの禁止」と「野良ねこのみなし飼い主責務」につながり、もちろん自治体の施策の根拠となる法律に基づいたものではありません。このような自治体の多くは、「適切な管理」を、「飼い主責務同等の管理」と決めざるをえないため、冒頭の所有者等の権利義務係争が起こります。



 動物愛護法では、【所有者がいないねこに対し、動物の命に対して感謝及び畏敬の念を抱くとともに、この気持ちを命あるものである動物の取扱いに反映させるなどの、動物愛護の精神を「自分勝手できまま」に行っていると思われてしまいがちな餌やり】を、恣意的な餌やりとし、その善し悪しではなく、威圧的な餌やり禁止の措置に変わる【(恣意的な餌やりの対象となる)動物の管理】の施策措置を指針にしています。

 動物愛護法の施策措置は【所有者がいない動物に対する恣意的な餌やり等の行為のように、その行為がもたらす結果についての管理が適切に行われない場合には、動物による害の増加やみだりな繁殖等、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意し、所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドラインを作成すること。】です。

 歴史を検証しても「野良ねこへの餌やり」禁止の徹底は不可能でした。そのため、動物愛護の餌やりの結果について、動物の管理の両面を目指すガイドラインの作成を施策にしたものと考えられます。

 他の自治体では、野良ねこ迷惑被害側の立場に傾倒し、愛護動物の法令を超えて「餌やり」とその因果関係から「環境不良状態」を証明できるとき、条例違反として「餌やり」の禁止を定めるなどの混乱が広がっています。
 法律では前述の通り「恣意的な餌やり」を認めた上での、動物愛護と動物管理の両立の対策ですから、愛護動物のねこを対象にした「結果的な餌やり禁止」条例は、動物愛護法を超えた違憲立法を疑われます。

 法律では飼い主や取扱者の法令順守の責務に違反して、周辺の生活環境の保全が損なわれる事態の認められる際に、飼い主や取扱者に対して罰則が決められています。この条例は法律をそのまままねて「周辺の生活環境の保全」を「餌やりによる環境不良状態の発生」と置き換えただけのものですから、飼い主等の責務履行違反により保全を損なう違法行為に対する規制ではありません。
 この条例で、条例違反にしている「不良状態の発生」の事態を起こす対象は、人ではなく「飼い主のいないねこ=野良ねこ」です。愛護動物に「餌を出す行為」そのものを条例の前段となる法律では禁じていませんので、「人が出す餌」によって環境不良状態を起こす「野良ねこのタマ」に対して、不良状態を起こすな!などといいながら「禁止罰則」を行える道理もありません。
 飼い主ではない者が「餌を置く」ことによる不良状態は好ましいものではありません。鳥獣保護法(略称)が対象にする野生動物の生態に影響を及ぼす作為的な餌やり、などは禁止できますので「カラスへの餌やり禁止」と、愛護動物のねことは根拠法令が異なります。

 愛護動物の飼い主が、違法行為をしないでも行える「生活環境の保全」と、愛護動物から損害を被る側の人が違法性を立証しなければならない「不良状態の発生」は大きく違います。前者の保全を損なう違法行為者には罰則も定められますが、後者を発生させた「ねこ」と「餌」の因果関係は民事の分野に係わり、餌やりと飼い主の因果関係の証明は法廷でも慎重です。(数年前の神戸居酒屋裁判を参考にしますと、反復継続して出された餌の分量と、ねこが食べたら排せつする糞尿の分量との因果関係から、受任限度を係争の判断基準にしたものであり、給餌と飼い主の権利義務の立証を避けています。)

 こような条例を考える自治体の混乱の原因は、対象とすべき愛護動物を単なるペット・愛玩動物と位置付けていることです。ペットの餌に責任を持つのは当然です。ペットが起こすかもしれない環境不良状態を、飼い主が予防するのも道理です。ペット・愛玩動物には必ず所有者占有者取扱者などの権利義務を有する人がいますので、行政による管理責任の指導も容易です。

 野良ねこのタマにも飼い主がいると行政の指導は行いやすくなります。「環境不良状態の発生」の定義を条例で決めて、結果的に「みなし飼い主責務」を作り上げ、行政主導による「野良ねこの管理」を企てたものと思われます。結局、「環境不良状態の発生の定義」に背く人には罰則が課せられ、対象の野良ねこは本能による生態の循環を続けますが、みなし飼い主の付かないねこに対する「動物の愛護と管理の両立を目指すことのできる措置」をこの自治体では行えません。



 野良ねこ迷惑被害と動物擁護の両立を図り、行政施策の逸脱、法を超えた措置、民事介入などの事態を避けるための折衷案が【所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドラインを作成すること。】と思われます。

 『飼い主ではない者が「餌を置く」ことによる不良状態は好ましいものではありません。』しかし、飼い主ではない者に「飼い主責任」を与えなくては施策措置の行えないパンフレットや条例も好ましいものではなく、動物愛護と動物管理の両立がはかれません。



 実際の「所有者のいないねこの適正管理の在り方対策(通称・地域ねこ対策など)」の実行地区では、「動物愛護の精神から給餌を止めない人の擁護」よりも、「野良ねこ迷惑被害の起こる地区での、ねこの生態循環の支配と管理」などの考えが「官民協働事業」の形態を推進しています。

■「所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドライン」の参考見本。
クリック→ | 所有者のいないねこの適正管理の在り方等についてのガイドライン『要綱』 | pdf/10k/A4モノクロ3頁
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【参考のホームページ・法令などの一部】
動物の愛護及び管理に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48HO105.html

動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針
(平成18年10月31日環境省告示第140号) [PDF 40KB]
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/guideline_h181031.pdf

動物愛護管理基本指針の点検(進捗状況)について
http://www.env.go.jp/council/14animal/y140-23/mat02.pdf

東京都動物の愛護及び管理に関する条例
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/horeishiryou/houki/files/jyourei.pdf

東京都動物愛護管理推進計画
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2007/04/70h45100.htm



2009.7.(無断転載はご容赦ください。)

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