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  アニマルウエルフェア連絡会

※お問合せへ、概略のみですがご案内いたします。2010.h22.03.28up


●環境省が発行した「地域猫ガイドライン(←リンク頁へ)」へのさまざまな評価。

平成22年2月 発行:環境省 『住宅密集地における犬猫の適性飼養ガイドライン』・・・について
 所有者や占有者(以下所有等)のいる愛護動物について、個人や取扱業など所有等の主体となる人々の分野や区別に関係なく所有等をする者に適正な飼養、終生飼養、犬やねこの繁殖制限等の責務が生じるためこのページでは割愛し、「地域猫」に限り取り上げます。

 『地域猫対策に熱心な市民と、一部の役所の間には乖離(かいり・そむき離れる)もみられるので、新しく動物愛護法の執行所管を決めてすすめる地域猫対策の施策措置は、我が役所の公益性や公共性という判断になじみにくい。』という地域行政がレアケースではないことを受けて、環境省の地域猫ガイドラインを読んでみました。

■「所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物愛護と動物管理の両立を目指すことのできるガイドライン」を、AWN連絡会のメンバーが行政マンなどと意見交換しながら試作した参考見本は、クリック→ | 所有者のいないねこの適正管理の在り方等についてのガイドライン『要綱』 | pdf/10k/A4モノクロ3頁・h21.7.28up


環境省発行「地域猫ガイドライン」の評価が3つに分かれるようです。地域猫ガイドライン(←リンク頁へ)

(1)地域猫ということばを取り入れたことに対する評価。
(2)動物愛護法(略称)を根拠法令にしながら、同法に準拠していない解説が多いという批判。
(3)1と2の折衷案。地域猫対策を取り入れる人々や行政が、ガイドラインが適切か不適切かを判断しながら使えば良いとする意見。

法律では「neko」を「ねこ」としています。AWN連絡会では基本的に「ねこ」としますが、ネコや猫も使っています。

A【同じ過ちの繰り返し】
 動物愛護法では、第44 条第4項で「愛護動物」を次のように決めています。
前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
 第44 条の11種の動物は人に飼われていなくても「愛護動物」です。
 某大手政府系財団法人が制作し環境省が発行したパンフレット「動物の愛護及び管理に関する法律のあらまし」には、動物愛護法の「対象となる動物」として「人が飼っている全ての動物」と定義しています。地域猫対策は人が飼っていない「飼い主のいない猫」を対象にします。リンク→|環境省のパンフレットと自治体条例の問題点

 パンフレットの解説に従ったからなのでしょうか?当ガイドラインでは「飼い主」を「動物の所有者又は占有者(動物の飼育又は保管をする者)」と定義せざるをえなかったようです。(動物の飼育又は保管をする者)に「動物の所有者又は占有者の権利と義務」を与えて「飼い主」とみなすための根拠法令や権限は、環境省にも自治体にもありません。
 (飼育又は保管をする者)の行為と、される対象の動物との因果関係から「飼い主」を証明しなければならないため、役所が自ら民事に介入することになり、(飼育又は保管をする者)を所有者又は占有者である「飼い主」と断定する際に、行政民事不介入を侵します。
 当ガイドラインに「飼い主」の定義がどうしても必要な際には、「動物の所有者又は占有者(所有者又は占有者のいる動物を飼育又は保管する者を含む)」などにしなくてはいけません。「飼い主」を定義したことによって、法律の範囲を超えた「違憲立法」の条例が多くみられます。

B【意味の取り違い】
(イ) 所有者がいない動物に対する恣意的な餌やり等の行為のように、その行為がもたらす結果についての管理が適切に行われない場合には、動物による害の増加やみだりな繁殖等、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要がある。
 ===============
 講ずべき施策  所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドラインを作成すること。「以上は動物愛護法による告示、基本指針より引用」

(ロ) 飼い主がいない動物に対する無責任なエサやりなどの行為により、みだりな繁殖、ふん尿による被害の増加など、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要があることから、「(ロ)は、(イ)の法律による「告示」を解説したガイドラインからの引用」

 (イ)と(ロ)は似ているようで、極めて重大な違いがあります。多くの場合(ロ)の解決方法として「無責任な餌やり」は「動物愛護管理上よくない」ので、「禁止」につながります。都道府県の動物愛護管理推進計画に同じような間違いで解説した自治体もあります。(ロ)は、(イ)の法律による「告示」を解説したガイドラインからの引用です。

 法律の告示(イ)は「恣意的(身勝手)な餌やりのもたらす結果についての管理が適切に行われない場合」つまり、「勝手きままな餌やり」があるという条件のもとで、「動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合がある」から「動物の愛護(例えば身勝手な餌やりなど)」と「動物の管理(飼い主のいないねこの生態循環の管理や支配)」の「両立を目指す」ことのできる「ガイドラインを作成すること。」としています。
 法律では当ガイドラインで解説する「禁止に値する無責任な悪い餌やり」というのではなく、きままな餌やりがあるので、その結果について動物管理と動物愛護の両面を考えあわせて両立させる指針を持ちなさい、としています。

C【(地域猫)というねこと(地域ねこ対策・地域ねこ活動)について】
 法律の告示・基本指針に従って「所有者のいないねこの適正管理の在り方」等を検討しながら、過去の地域ねこ活動の実績に照らし合わせたところ、地域猫とは「不特定の飼い主さんのいる、繁殖制限の施されたねこをつくり出す」ことや、「町のみんなで特定のねこの飼い主責任を持ち合う」ものでもない現実を目の当たりにします。

 飼い主さんには「所有者等の厳しい責務」が課せられる反面、「離脱有体物としての動物の所有権」も与えられます。地域住民が環境問題として「地域猫対策」を行っても、地域猫になった「もと野良猫」の「所有権」を地域住民から要望されることは特別な場合を除いてありません。
 もし、「みんなが飼い主・地域猫」の考えがあったとしても、根拠法令の基本指針で「『所有者のいないねこ』の適正管理の在り方」といっていることからして、「野良ねこに、不特定ながらも飼い主もどきの世話人をつけて管理責任を持たせる」だけのものとも異なります。

 ねこの生息する地域のコミュニティが行政と協働して行う、「ねこの生態循環を人々が治めて、動物愛護と管理の両立を目指す。」あるいは、「ねこの棲息循環の支配と管理」または、「生態循環の抑止と支配」・・・なども地域ねこの定義といわれます。
 「動物管理=野良ねこ迷惑」と「動物擁護=ねこ好き」の歩み寄れる地域環境保全活動だからこその定義と思われます。

 既に棲んでいる「地域猫」が、飼い主のいるねこを思わせる「管理者のいるねこ」だけでもありません。地域ねこ対策に不可欠なTNR(保護・捕獲/繁殖制限手術/返還)が徹底して行われながら、地区との合意形成が達成途中の「地域猫」の事例は古くから多数あります。これらを「所有者のいないねこの適正管理」に類する社会活動ではない、と断定する権限も役所にはありません。

 任意のTNRなどを「地域猫」という社会活動に位置付けるには、(1)行政マン向けの地域猫対策実行マニュアル(2)ねこの棲む地区の環境保全のための地域猫対策推進マニュアル(3)ねこの世話をできる人向けの地域猫対策保護管理マニュアル、この三本の柱を総轄するガイドラインが必要と考えられます。
 尚、対策の対象となるねこを地域猫と呼ぶことも多数ですし、個体識別管理されて地域猫と呼ばれることもありますが、飼い主のいない猫との共生を目指す事業を総括した通称を「地域猫」とする場合が一般的です。

※地域猫とは 地域の理解と協力を得て、地域住民の認知と合意が得られている、特定の飼い主のいない猫。その地域にあった方法で、飼育管理者を明確にし、飼育する対象の猫を把握するとともに、フードやふん尿の管理、不妊去勢手術の徹底、周辺美化など地域のルールに基づいて適切に飼育管理し、これ以上数を増やさず、一代限りの生を全うさせる猫を指します。(当ガイドラインより引用)


 当ガイドラインの上記「地域猫」の解説は、具体的な実行にあたって、役所の措置や要綱上で確立された指針や定義としての意味合いではなく、地域ねこ対策を行う際の住民や役所の気構え、事前の知識習得などを目的にしたものと思われます。
 任意にTNRを行う人のほか、ねこの健康や福祉、習性生理本能生態などに精通している人々による自然発生的な行いとして上記のような結果が理想にうつることから、定義めいた解説が試みられたものと思われます。
 上記の理想的な結果を目指す活動は、役所や地域の一般住民が主体となり、任意にTNRを行う人やねこの健康や福祉などに精通する人々などの「ねこの世話をできる人など」との関係づくりに基づいて「協働」態勢の整うとき、具体化へすすむ事例が多数といわれています。


D【対策の主体者と、活動や行動の比重の高い人々】

地域ねこ対策や地域ねこ活動を必要とする要因
(1)野良ねこや、不適切な飼いねこなどからの迷惑侵害などの防除対策
(2)動物(ねこ)擁護を起点とする対策
(3)1と2の折ちゅう案
 1.2.3.のいづれの要因をきっかけにしても、対策の主体は「地域組織(あるいは管理組合、敷地の管理者、理事会など)」です。

 地域猫ガイドラインは、動物愛護法を根拠にした告示の基本指針に従い、動物の愛護と動物の管理の両立を目指す都道府県が、行政施策として法規法令を実行するための指針です。従って、施策実行の主体は行政が管轄し関与する範囲の及ぶ町会などやそのほかの地域組織とする認識が妥当と考えられます。

 地域猫の世話をする人は、活動や行動の比重の高い役割分野に位置付けられ、そのほかにもねこに関する特別な知識や技術のある人などとの適切な関係づくりに裏付けられた「協働」の役割分担の仕組みです。
 多くの場合、「ねこの習性生理本能生態健康福祉」などや「地域コミュニティの状況」などの知識を持つ、比較的「ねこ寄り」の人が対策のきっかけづくりや推進役となり、迷惑侵害を感じる地域住民組織や地域猫の世話をする人などへ、役所と共に解説にあたる役割を担いながらすすめることから、結果的に「世話をする人」の行動の比重が高くなりますが、総轄的な対策としての主体は、対象の地区を管轄できるある種の組織と考えられています。
 地域猫と呼べるねこや地区(地域)を成り立たせるために、実行の主体や主体者をどのように設定して見極めるかが大切なポイントといわれます。

 当ガイドラインにさきがけて浸透した「東京都・飼い主のいない猫との共生支援プログラム」の当初の対策の主体は「地域住民組織」でしたが、現在では組織のくくりの中に公園、公共施設、河川敷などもはいっています。




●大勢の飼い主をつけた「野良ねこ」を「地域猫」というコミュニティがあるならば、それはそれなりに否定できるものでもありません。

●根拠法令に従って「所有者のいない猫」の管理と愛護の両立を目指すとき、ねこの生態の繰り返しを人々が支配し制御する仕組みづくりが行われており、行政・住民・ボランティアの役割分担で、対策の主体となる地区や地域で成果を出しています。

●環境省の地域猫ガイドラインを、例えば実社会に旅立つ前の「学習書・教科書・手引書」的な意味合いで参考にするとき、地域ねこに関わる人々の義務や権利などに及ぶことなく、地域環境保全に寄与しつつ動物愛護精神の尊ばれる「地域猫」にすすめるものと思われます。


【参考のホームページ・法令などの一部】

動物の愛護と適切な管理 人と動物の共生をめざして
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/

動物の愛護及び管理に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48HO105.html

動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針
(平成18年10月31日環境省告示第140号) [PDF 40KB]
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/guideline_h181031.pdf

動物愛護管理基本指針の点検(進捗状況)について
http://www.env.go.jp/council/14animal/y140-23/mat02.pdf



2010.3.(無断転載はご容赦ください。)

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