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板橋区 罰則付き動物愛護条例|へ戻る

※お問合せへ、概略のみですがご案内いたします。2008.h20.11.28up
※この頁の内容は、随時不定期に更新が予定されています。
●板橋区「人と動物との共生及び動物の愛護と管理に関する条例」の制定について

【屋外で行動する猫にえさを与える場合には、不妊去勢手術の実施に努めるとともに、えさの後片付け・ふん尿の処理を義務付けることにより、周辺地域の生活環境を保全するとともに、猫を好まない住民の飼い主のいない猫に対する理解を促進することとします。
※ この条例は、飼い主のいない猫にえさを与える行為すべてを制限・禁止するものではありません。適切にえさの後片付けやふん尿の処理を行い、不妊去勢手術の実施に努める活動を行っている個人・団体は本条例の対象となりません。】…についての意見

この条例案中、上記枠内の事項の一切を不要とする意見です。

理由(1)…
●東京都の施策である「飼い主のいない猫との共生支援事業」に従事し体験した結果の一般論として、「どのような強い手段を用いても、飼い主のいない猫に餌を与える行為は決してなくならない」という見識は、その行為の善し悪しに係わらず、常識的であり現実的であるとされています。
●一般論の常識や現実を裏付ける考えは「法令で野良猫の健康や福祉の擁護や、野良猫への給餌義務までを決めてはいない。」しかし、「命ある動物を守りかばおうとする人々の思いや行いを、他の人々はその者たちの動物への思いや行いと同じ様に、やはり保護すべき。」という意見を、「憲法の精神につながる」という考えすら聞かれます。
●「数十年も前に動物保護法の施行された時代から、事業者や飼い主の責務の適切な実行を、法令に基づいて執行しなかった行政不作為が野良猫を棲息させている原因のひとつである。」などの考えも伝えられます。「その結果棲息する野良猫擁護行動の禁止は、本末転倒」などの意見も生まれます。

理由(2)…
●民事の係争例でも、野良猫への給餌行為と「飼い主責務」の因果関係を証明していません。但し、猫が食べた餌の量と、生理的に出る糞尿の量の因果関係からして、被害を受ける者もなんらかの対策をしたにも係わらず、我慢の限界を超えた際に、違法性の判断の根拠としました。これらは動物の法令ではなく民法の範囲ですから、民事介入しない役所が給餌と飼い主責務を一緒にできません。また、飼い主のいない野良猫に給餌する人が所有者の権利を求めない場合には、やはり権利と義務の関係になりませんので、役所に「不妊去勢手術の実施に努めるとともに、えさの後片付け・ふん尿の処理」を義務付ける権限もない、といえます。
●「周辺地域の生活環境を保全」は、法令で定める「飼い主の責務違反」が原因ですので、飼い主のいない野良猫の環境侵害とは論点が異なり、一緒にできません。
●「猫を好まない住民の飼い主のいない猫に対する理解を促進する」ための施策は、役所の果たす役割としても極めて重要であり、ガイドラインなどを制定できますが、板橋区にガイドラインはありません。

理由(3)…
 猫を好まない住民の理解を促進するために、区条例の前段とされる動物愛護法の、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以後、基本指針)」では所有者のいないねこについて、次のようになっています。
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【本文の部分引用】 所有者がいない動物に対する恣意的な餌やり等の行為のように、その行為がもたらす結果についての管理が適切に行われない場合には、動物による害の増加やみだりな繁殖等、動物の愛護及び管理上好ましくない事態を引き起こす場合があることについても十分に留意する必要がある。

 講ずべき施策(ア)地域における環境の特性の相違を踏まえながら、集合住宅での家庭動物の飼養、都市部等での犬やねこの管理の方法、所有者のいないねこの適正管理の在り方等を検討し、動物の愛護と管理の両立を目指すことのできるガイドラインを作成すること。
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 この基本指針の通り、東京都では所有者のいないねこへの給餌を禁止することなく「飼い主のいない猫との共生支援事業」を施策として、ガイドブックを作りました。
 板橋区でも類似の対策を認識していますが、地域ぐるみで猫の棲息の繰り返しを抑えるという地域環境保全の考え方よりも、一部の猫好きに野良猫の適切な保護や管理を委ねるなど、動物愛護精神への押し付けの考えが強く感じられるため、対策の浸透が立ち後れたものと思われます。

【※この条例は、飼い主のいない猫にえさを与える行為すべてを制限・禁止するものではありません。適切にえさの後片付けやふん尿の処理を行い、不妊去勢手術の実施に努める活動を行っている個人・団体は本条例の対象となりません。】…、とする区の考え方からも、飼い主のいない猫からの環境保全は、一部区民の任意活動に終始していると思われます。野良猫の保護や管理に加えて、不妊去勢手術の強要などは、個人の財産権利への侵害になり兼ねません。
 東京都の飼い主のいない猫対策では、区民個人などに手術費用の負担をさせない仕組みも工夫され、都の獣医資格を持つ職員が一部の手術を行い、この仕組みは板橋区にも適用されます。区がすべての費用負担をしない場合に、自費を投じ自ら主体的に労力や時間をさきながら手術や環境の整備保全にあたる区民に限った罰則適用の対象除外は、その他の区民との公平公益性に欠けます。

 野生動物とは違い所有者のいない愛護動物の野良猫に対して、区条例の根拠となる動物愛護法では、餌やりの行為がもたらす結果についての適切な管理を自治体に求めています。同法では、前もって区条例の「周辺の生活環境が損なわれている場合」等の起こりうる事態を想定し、想定される事態から判断して、命ある生き物であるねこの習性・生理・生態・本能などを考えあわせた管理計画を検討する、としています。

 区条例は当初より「適切にえさの後片付けやふん尿の処理を行い、不妊去勢手術の実施に努める活動を行っている個人・団体は本条例の対象となりません。」としていることから、それ以外の者の「餌やりの行為」を、「条例の根拠となる法令」や都が区市町村を支援する「飼い主のいない猫との共生支援事業」の仕組みを超えて「禁止」し「罰則を適用」します。行政不作為の結果の事態の対策に、法などを超えた措置であたろうとしています。

 「餌やりの行為に、勧告、命令を経て、罰則を科す本条例」の前段とされる、「餌やりの行為の結果の適切管理を指針とする法律」や「飼い主のいない猫との共生支援事業」を施策措置とする東京都などとの整合性がありません。
 板橋区民は法令の及ぶ国民であり、東京都民です。

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2008.11.(無断転載はご容赦ください。)

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