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地域ねこ計画と、生物多様性の関係


 2003年(平成15年)から、生物多様性と人間との関係を考えるための国家的な事業が、「移入種対策法(仮称)」という新しい法律を作る方法で行われ始めました。
 動植物の生態系は、数億年ものサイクルで人間により研究発表されています。人類の歴史は動植物の起源とくらべようがないほど、わずかなものですし、私たちの一生涯は限られています。
 今、生きている私たちが、地球規模の環境を、遠い未来まで保全する目的で法律も考えられます。在来種動植物や、移入・外来種動植物を、適切な方法で保護や管理あるいは抑止をし、豊かな自然と人との関係を保とうとする、今生きている人間の生み出した試みです。

 動植物の生態系は数億年というサイクルで変化をし、現在の姿になっています。移り行く地球環境の中で、自然に生態系が変化した動植物もいました。人類が道具を使い出し、植物を育て、動物を家畜にし始めてから、生態系と人間との関係は大きく変わりました。
 人間は生活をより良くするために、自然環境を利用します。人間に利用される自然環境には、既に動植物が生きていましたので、人間によって生態系を侵された動植物がいます。
 平成15年には、ニッポニアニッポンと名付けられた国鳥の「トキ」在来種の最後の1羽が死にました。いわゆる人間による環境侵害に起因した「絶滅危ぐ種」の絶滅です。

 近年では、人間の生活を潤わせる目的で海外などから持ち込まれる動物が多くの種類に及んでいます。これらの動物は、飼う(保護や管理をする)人の手から保護や管理を解かれることも多くなりました。
 人の管理から解かれて、多くの人々の生活に関係する環境に生息の範囲を広げるため、動物による環境への侵害を訴える人々も多数です。動物を巻き込んだ環境侵害は全国の各地で大きな問題になっています。
 人間の文化や文明が進むにつれて、人間が生きる上で、人の役に立つといわれる動物もたくさんの種類になりました。
 動物の種類に限らず、人が動物を役に立たせる立場からの分類もたくさんあります。家畜や畜産のほか、スポーツ、展覧用、文化的行事、皮革の使用、動物実験、人の福祉への使用、人の潤いに使われるペットや、人のための医療でも動物が使われています。
 動物が人の役に立つ物とされるに従い、動物に関係するビジネスを生活の糧とする人たちも多くなり、動物関連産業は大きな広がりを見せました。

 人類の誕生と動物との関係を、単純素朴に思い返すとき、多分人類の起源に近い時代に生きた者たちは、生態系の循環の定め通り、他の動物の餌にならない努力を怠らなかったことと思われます。
 それから後、素手では動物にかなわないものの、動物を捕らえる方法を知った人類は、己が生きている間は動物を食べたことでしょう。人が死んだ後には己も大地にかえることや、同種の動物の増え過ぎによる絶滅危ぐを防ぎ、その生態を保全する生態系循環の定めにそっていたものとも考えられます。
 高度に文明化の進んだ現代です。人の役に立つように、人の手で生態や習性を作り直された動物が多数生きています。それらの動物のすべてが、人類の餌にはならないですし、他の生態を保全し、生態系循環に役立つ仕組みも人間は作っていません。
 人類が動物の保護や管理を行い始めた歴史をさかのぼり、人が関係する生態系や地球規模の環境を作り直すことが、今となっては不可能です。

 今、生きている私たちが、同じ時代に生きている「命ある生きものたち」とどのように関係をもつべきなのかを考えるときのすごく身近なサンプル動物がいます。
 人のそばに寄り添う性質を持ちながらも、人には従わないで自由に生きようとする「ねこ」には、絶滅危ぐ種ねこのほか、生活環境侵害苦情の元となってしまうノラネコ、人を潤しながらノラネコも作り出すペットのねこ、などなど様々です。
 地域ねこ計画は、生物多様性の国家的な事業を考える、身近なサンプルプログラムといえます。
 人と動物との関係を、地球規模の環境保全とともに考える時、私たちのそばで生きているねこがたくさんのヒントをもたらします。

 人は動物に対して、何をすべきなのか、何をしてはならないのか…?大きな課題です。


命ある動物と、地域ねこ計画と、法律の関係とは


 法律は、その時代に法律を必要とする、様々な公益的な事情に心配りされて、国民が上手に使えることを前提に、なくてはならないときに作られるといわれます。
 法律を威圧的に使うことは避けなければいけません。また法律は「法の精神」リーガルマインドを基本にしますので、なぜなくてはならないものなのか、誰にでも分かりやすくなければいけません。
 我が国には、動物に関係する法律がたくさんあります。しかし、命ある動物という基本原則をリーガルマインドにした「動物基本法」の様な法律がないので、国民の間の混乱は消えません。(※動物基本法については、項目別途。)
 主に、愛護動物(動物の愛護及び管理に関する法律/平成12年改正、従来の保護動物を愛護動物に変更)に関係する法律は、動物愛護管理法と狂犬病予防法や鳥獣保護狩猟適正化法などです。(※動物愛護管理法については、項目別途)

 これらの中で、従来より行政が威圧的に執行しているともされる法律が、昭和25年に作られた狂犬病予防法といわれます。
 この法律で、条件付きながら動物の「処分」が定められたので、各自治体は動物の致死処分や終末処理の設備を持つことになります。
 人間の命を奪う狂犬病の撲滅を目的に、犬や狂犬病発生の恐れのある動物を扱う人間に対して、厳しい規制を課したものでした。しかし法を必要とした当時は、多くの野犬が徘徊する時代でしたので、いつの間にか「野良犬や動物を殺す」ために法も使われるようになりました。
 現在でも自治体に引取られた動物に対して、生存の機会を与えるための施策は行われず、この法によって作られた致死処分施設が利用されています。
 この法律では、特に犬の飼い主に対して、犬の登録や予防注射を規則にし、違反した場合には可罰的違法行為(罰則の有る犯罪)としました。しかし、狂犬病の発生を人間の行いによって抑止する法規制には極めて寛大でした。現在でも登録違反者は犬の飼い主のおよそ半数、鑑札票などの装着違反者を含めると莫大な数になることが知られていますが、規則を守らない人間が処罰されることは極めて少なく、人間が怠った規則違反のために、多くの犬や動物を殺すことから、法を威圧的に執行した例にされています。

 昭和48年に作られた動物愛護管理法(改正前の動管法)は、狂犬病予防法と異なり、ほとんど実行されない法律でした。
 他の動物の法律との大きな違いは「動物が命あるものである」と表現し、人と動物との関係に及んだことです。人の所有する単なる離脱有体物に対する、人の管理責任という見方を超えた規則も作られました。
 動物取扱業も含めた飼い主などの責務として、●生態・習性・生理を理解し、感染症の知識を持つ「適正な飼養」●一生涯の「終生飼養」●産ませても適正な終生飼養のできないときの「繁殖制限」を柱とし、遺棄や殺傷、衰弱虐待には罰則も定められていました。
 更に、行政が引取った動物に、生存の機会を与えることに努めるとする通知が、管轄官省から都道府県などに通知されたのは昭和50年でした。しかし、適正な終生飼養の責務違反者が引取り申請する際に、行政は致死処分施設の利用を容易に受け入れました。繁殖制限の責務も満たされないため、生後間もないねこの引取り依頼も続いています。
 ペットは単なる愛玩動物ではないといわれながらも、もらい手が有るかも知れないという理由から、わざわざ人の手で行う繁殖が続き、やがて手放される動物もなくなりません。
 多くの動物がビジネス社会に供されるため、近い種の間で劣化繁殖が繰り返され、生まれながらの疾病障害や感染症の発生を防ぐことも遅れています。(※近交劣化現象は、項目別途)生まれる前から譲渡を目的にする繁殖行為は法の精神とは異なりますが、積極的な行政指導が行われることもありません。
 同法の施行後数十年を経た近年になって初めて、余剰動物と呼ばれていた動物の引取りにあたり、「飼い主のやむを得ない事態の緊急避難的な措置」と位置付けるなど、規制を強めた動きも少しづつ見え初めました。

 狂犬病予防法を、行政が法を威圧的に執行した例とすれば、動物愛護管理法は、行政による法の実行不作為の例といわれます。

 近年になり、どちらにも改善の動きが見られており、法を威圧的に使うことなく、また法を適切に実行する例として、地域ねこ計画が試みられています。

※「項目別途」の事項は、|他サイトの Q&Aもくじ|も見るなどの頁に掲載予定の場合もあります。




2004.01.(無断転載はご容赦ください。)

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