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Q いのちある動物と、譲渡の価格?? A
本質論だけで、今の世間は動けませんが・・・


●例えばドイツでは、16才未満の者に動物を販売すると処罰されます。
●我が国でも生後120日以後に販売される犬に、鑑札などを付けておかなければ処罰されることになっていますが、処罰された例を聞いたことがありません。


●海外の主な国々では(例えば、ドイツ・イギリス・アメリカ・フランスなど)動物がおかれる立場によって、動物の本質的な位置付けを変えようとしていません。ただし、原則的には、動物がその都度おかれてしまっている事情によって、その動物を取扱う人のこまごまとした行為を、逐一法律で規制し、罰則もたくさんあります。
●我が国でも動物を「愛護動物」という言葉で定めた法律がありますが、畜産と実験におかれる立場の動物にはこの法律が適用されません。しかし、あるときには畜産と実験におかれてから、またあるときは愛護動物に戻ることや、さらにその逆を容易に動物がたどることも、現行の法律上は可能です。


●我が国には、主にペットと位置付けられ、産業や展示、取扱い業のほか、個人に飼われる動物を対象にした動物愛護管理法があります。また、狂犬病の撲滅を目的に、動物愛護管理法上の動物にも適用される、狂犬病予防法があります。(他には野生動物に関連する法律もありますが、省きます。)

 もう、お気づきと思いますが、動物愛護管理法上で「いのちある」といわれる、すべての動物に関係する「動物基本法」が、我が国にはありません。狂犬病と愛護動物と畜産とでも既に主務省庁が異なります。そのため、いのちあると定められてはいるものの、大きな思い違いが世間の一般的な風潮になっています。
  
◆いのちある動物を、ペットと称して人工的に変革や繁殖をさせ、値段を付けて売ることを戒める文章を、法律の中に一目で見つけることは困難です。しかし、厳密に見極めると、適正な終生飼養や繁殖制限、感染症の知識を得ることなどは、取扱業といえども適用除外になっていません。
◆もし、仮りに動物基本法が我が国でも作られる時代になったとして、その際に現行の動物愛護管理法の精神が保ち続けられると仮定するならば、ペットショップでの生体陳列展示は戒められるでしょうし、単なる人気愛玩物と位置付けられ、販売競争にさらされる動物に対する商業的な行為も規制されることでしょう。


◆前述の海外などでは、「人の役にたつ」立場にいる動物個体の限られた範囲で、厳格に各個体の血統などでも登録され、わざわざ人の手で繁殖されることも法律で厳しく規制されています。他方、その国の文化や背景事情などにより、その種類の動物がなくてはならないとする立場の人に配慮することが、公益性に基づく法の精神とする一面もうかがえます。厳格な個体登録とは、通常よく耳にする「ある固定種の保存に努める」という意味ではありません。近交劣化や退化、つまり近い血筋をかけ合わせることで発生する奇形や疾病障害、新たな感染症の発生のほか、いままで生存しなかった生物を思いもかけずに新たに人の手で作ってしまうことを防ぐなど、生物本来のあるべき姿に反する行為を戒めるためのものです。


◆ですから、店頭陳列のペット商品動物よりも、固定種の繁殖生産所から通信販売などで直接手にいれた方が先進的、などの考えは大きな思い違いです。我が国の実情から本質的には、ペットショップの個体も固定種繁殖生産の個体も同じ商行為とみられます。


■さて、そうなると、何らかの目的で、人の役にたち、家族の一員として一生涯の伴侶とする位置付けの愛護動物を、人はどこで手に入れればいいのでしょうか??


■まずその前に、現行の動物愛護管理法に定められている「飼い主さんの守らなければならない、すごく重要なことがら」を、だれが、いつ、どこで、新たに飼い主になろうとする方々にお伝えしているのでしょうか??


■一部の動物愛護センターで、犬の飼い方教室が行われています。首都の例では、飼い主が終生飼養の責務と所有権を放棄しなければならない、いわゆる緊急避難的な措置(※注1)として引取らざるを得なかった子犬は、運良く新しい飼い主と巡り会っているようです。(※注1・法律上の「緊急避難」を簡単にいうと「現在の危険を避けるためほかに方法がなくやってしまった行為は、その害を避けなかったと同じ程度であれば罰しない。」です。では子犬を自分で殺せば、動物殺傷犯罪で罰せられなくて済んだのか?いいえ、繁殖制限という責務の措置があったし、終生飼養や新たな譲渡先探し責務などの放棄が正当であることを自身で証明しなくてはいけません。余談ですが、不要犬ねこの定点収集巡回などはまったくの、完璧な思い違い措置といえます。)

■犬は人に従属するという考えから、犬への躾や訓練を行うことが飼い主の努めとなっています。しかし、すべての飼い主が訓練を行うための施設もまだまだ不足しており、訓練費用もかかります。このため行政に引取られた成犬に、新しい飼い主が現れにくいのも事実です。安易な愛玩物として犬を見る風潮が高いこともあり、小型の室内用子犬に人気が集まります。


■しかし、本質的な意味での「伴侶とする犬」ということを、すべての飼い主が容易に理解できるような、適切な知識の普及体制が整い、常に啓発が続けられ、専門的な知識や技術を有する者による躾や訓練の施設が手軽に利用できるようになる時代が、やがてやってきた折りには、安易に愛玩用の子犬を求める風潮も長く続かないものと考えつきます。




■犬と同じように、適切な風潮を呼び起こしながら、時代に変革を求める動きはねこにもあてはまります。
■犬は人と縦型の関係で従属しますから、専門的な訓練は欠かせません。
■ねこは人とも横型の関係で、対等の位置の動物ともいわれます。

そこで、現在少しずつ始まっている、センターなどでの犬の飼い方教室を、ねこの飼い主にも広げられると仮定します。

■人に従属する犬と異なり、ねこの飼い主にはその第一歩として「遊歩を始め・周辺環境を侵さない」ための、飼い主向けの知識の履修と、実際に飼う場所での飼い主の実地訓練が基本になることでしょう。

■成ねこの場合に、飼い主のために指導する専門的な知識を有する者などのカリキュラムは、数カ月からあるいは数年もの間に渡り、ねこと一緒の飼い主のケアーにあたれる工夫も必要です。実際には、譲渡から数日の間に逃亡される新たな飼い主がたくさんいます。ねこは人に従属しないので、飼い主の好都合の場所に、自ら進んで戻りません。また、室内野良ねこ状態を何年も続けるねこもいます。

■このため、一生涯の伴侶として一緒に暮し始めた成ねこが、ゴロゴロと寄り添う姿を望む新たな飼い主の場合には、長期間の履修の心掛けも必要となります。

■このような知識や技術の履修システムは、犬の訓練施設と異なり、まったくないといえる状態です。

■新しい飼い主に対する、適切な指導のカリキュラムの実行と、緊急避難的措置として行政に引取られる愛護動物に対して、飼養の継続に努め、飼養の機会を与える措置を、行政が施策としてシステム化する場合の重要なポイントがあります。また、飼い主の責務を満たすという実行措置を、民間だけで行うには、強制力が伴いません。


■重要ポイント/狂犬病予防法による、犬の登録制度を応用した、犬の飼い主履修制度。
■重要ポイント/登録制のないねこですから、新たに飼う人に対する、飼い主登録制とねこの生態・本能・習性を理解するカリキュラム履修制度。


■これらの制度の運営コストは、新たな飼い主からの徴集も不可能ではありません。
■これらの制度が市民と協働で継続定着する際に、やがて将来になって、緊急避難といわれながら安易に引取り申請される動物や、値札のつく愛玩用小動物も減少することが容易に予測できます。なぜなら、ねこの飼い主履修制度の行政施策はまったく存在していないからです。
■このように時代が流れ始めると共に、事業者などからの商用余剰動物の発生抑止も図れます。
■その結果、やむを得ない事態に限り、緊急避難的な措置と位置付けられる場合の引取り申請動物は減少するので、本来の意図に添った際の引取り手数料の付加も可能ですから、引取った動物に生存の機会を与えるための運営コストも賄えます。(既に、民間事業では、終生に渡る生存の継続を本来の意図として引取る際に、1頭当たり数百万円の価格設定もされ始めています。)



■誠に残念な現実ですが、今の世間には、世に捨てられて遊歩や徘徊を始める愛護動物がたくさんいます。それらの動物たちの新しい飼い主探しや躾や訓練などを行う、いわゆる動物ボランティアといわれる者のほとんどが、無償の奉仕活動です。ボランティアは譲渡の際にも、いのちある動物に値段をつけることを好みませんから、コストの回収はいつまでもできません。

■保護犬ねこの譲渡に際して、その個体に値段をつけることをボランティアは好みません。しかし、動物の新たな飼い主に対するカリキュラム履修制度や、事後のケアーの実行にボランティアが参画するとき、行政が後押しして定める飼い主への請求金額を、何らかの形で受領することはこの限りとはいえません。

■行政が箱ものシェルターを運営することは、法律上も可能ですし、運営の要望も高いのですが、まだまだ我が国では馴染みが少ないようです。年間数千万円から億にものぼる維持費を要する箱ものシェルターを、市民レベルで運営するには困難がつきまといます。



本質論だけで、今の世間は動けませんが・・・
夢物語だけでもない、具体的な実行計画・・・


■地域行政が、狂犬病予防法による、犬の登録制度を応用展開した、犬の飼い主履修制度を構築する。
■同じく、登録制のないねこには、新たに飼う人の登録制とねこの生態・本能・習性を理解するカリキュラム履修制度を構築する。

とりあえず、この2つだけでも地域行政が施策としてシステム化するときに協働事業が成り立ちます。

■ところで、一見すると類似するような譲渡イベントが、行政もバックアップする中でも常時行われています。例えば事業者団体の民間獣医師病院で、前もって検査などが施された不要犬ねこを、行政施設を開放しながら展示して、来訪する希望者にその場で譲渡するイベントなどは顕著な事例です。このようなケースでは、飼い主責務と所有権を緊急避難的に放棄した事態への、やむを得ない対応とは言い難いのですが、殺されるよりは生かすための慣習として、長期に渡りさまざまな形式で、各地でも行われているようです。譲渡に付される動物の健康維持には役立ちますが、動物の本能、生態、習性、生理も理解する、人と動物との適切な絆を求める方法は、ほかにもあるようです。飼い主の適切な終生飼養や繁殖制限の責務強化は、安易な引取り譲渡イベントの恒例化と馴染みません。先ずその前に、引取り申請を徹底して抑止するための行政プランが欠かせません。


■いわゆる動物ボランティアといわれ、一般よりも専門的な知識を有する多くの市民は、行政との協働事業とする位置付けがあれば、今既に手許にたくさんいる保護犬ねこを新たな飼い主に引き渡すとき、犬の飼い主履修制度や、ねこの飼い主カリキュラム履修制度を実行できます。

■この制度は、一部の地域で動物ボランティアが主体となって犬に限り行われています。しかし、未だ確定した行政施策という位置付けの、民間委託協働事業には至っていません。主に行政の引き取り動物が対象であったり、運営コストや労力の多くが、ボランティアの自己負担となっていますが、動物を殺さない方向への展開を感じ受けます。

■また、首都などがモデル施策と位置付けする野良猫対策(※注2)も、理念では行政と市民ボランティアと地域町内会住民などの協働事業ですが、数字で示される運営経費の計上はありません。また、ボランティアが保護するねこを、新たな飼い主へ譲渡する際の行政支援システムは確立されていません。但し、お金は出さないが行政の仕組みの中でできる限りの後ろ楯になる。また、原則として通常なら実経費のかかる野良猫手術費負担を市民に負わせない、ことなども特徴です。(獣医資格を持つ職員が緊急避難的に無償で手術を行う場合、動物病院医療事業を適用させないとする地域行政の裁量権もこのように使えるものなのでしょう。)(※注2)「飼い主のいない猫との共生モデルプラン」通称を「地域ねこ計画」



■最後に、動物と人の関係を学問としても位置付けられる立場におられる有名大学学部長の、動物法律関連書籍に寄せられたことばが印象に残りました。おっしゃられる意味合いは異なりますが、行政と市民とボランティアが協働で事業にあたろうと試みるとき、特に我々市民ボランティアが、共に心して事にあたれたら、上記の「飼養の継続に努め、飼養の機会を与える協働事業(つまり、保護犬ねこの譲渡事業)」も夢ではないように思われるのです。


「学」に結論を出すとき「理」と「法」は馴染みやすい。
「情」の世界が「学」を支配すると厄介だ。
(不愉快な)情」を理性的にしたのは「(議論する者たちの能力よりも)度量」にほかならない。




「垣根のない動物チームワーク」という「情」を各々の「度量」をもって理性的に展開すれば、犬ねこの譲渡協働事業も興し得る、と思うのです。




■犬ねこ譲渡協働事業プランは、草案計画中のものです。実行の画策がすすんでいますが、「ボランティアはなぜ保護犬ねこの無償譲渡に固執するのか?」という問いかけに応じた、ひとつのサンプル例として、その概要が公開されました。2003.07.



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