Q&A コーナー

アニマルウエルフェア連絡会・どうぶつネット・動物の法律を考える

●お問合せへ、概略のみですがご案内いたします。




【地域行政の条例・措置要綱・提言などについて】

◆東京世田谷区条例(ダウンロード頁↓)
http://www.city.setagaya.tokyo.jp/topics/hokenjo/hokenjofolder/download.html#jyourei

福岡市条例(ダウンロードファイル↓)
http://www.city.fukuoka.jp/download/159105369875.pdf
上が見られないとき ←クリック(.pdf)

◆東京目黒区ガイドライン(解説頁↓)
http://www.city.meguro.tokyo.jp/eisei/seikatuk/catgline.htm

◆東京中央区提言(提言の頁↓)
http://www.city.chuo.tokyo.jp/index/014003/021215.html

 動物愛護管理法の見直しに際して、最近作られた条例やガイドライン(措置要綱)のほか、提言などをご質問に対する参考資料とさせていただきます。
 この他の市区町村でも条例やガイドラインのほか、諮問への答申などを公開している場合もありますが、ここではすべてを網羅していません。


『もし、悪人がいなかったら、法律などいらない・・・。』という哲学的な教えを、新聞のコラムで見た記憶があります。


【動物愛護管理法「本法」より抜粋】
(条例による措置)第十四条 都道府県又は指定都市は、動物の健康及び安全を保持するため、必要があると認めるときは、飼養施設を設置して動物取扱業を営む者(動物取扱業を営もうとする者を含む。)に対して、この節に規定する措置に代えて、動物の飼養及び保管に関し、条例で、特別の規制措置を定めることができる。


●動物愛護管理法などの法令や条例を根拠にしてもなおかつ、自治体で行いにくい事態があるときなどには、市区町村独自の裁量による条例制定も、住民等の求めに応じて計画されます。(※原則として、行政は法令などにない事態を行えません。また法令などにある事態を行わなければいけません。)

●純粋に一義的に「動物が命ある」とする、住民等の求めにより法の基本精神に基づいた条例制定を、仮に想定しようとするとき、現行法令を超えた地方自治の裁量も必要になります。仮に、性善説に基づく例を世田谷条例とするとき、主に悪人の発生の抑止を目的にする海外法の例もあります。
 現実性に欠けますが、例えば『動物を、畜産、実験そのほか、実業の用に供することを禁止する。』条例も後者の場合には可能です。(※法令を著しく超える条例の制定は、独自の裁量権でも極めて困難なため、ほとんどの場合は既存の法令などの範囲の中で計画されています。)

●既存の法令によって「動物が人の役に立ち、人のために働く有体物」とすることが容易なため、現行法に従った実行措置のガイドライン、つまり地方自治体オリジナルの行政施策を、条例がなくても行うことができます。

●現行法の範囲の主な事項は、人の動物に対する行いの、「適正飼養」「終生飼養」「繁殖制限」の3本の柱と、やはり人の作為に対する罰則規定の「遺棄」「衰弱虐待」「殺傷」犯罪の抑止と執行です。

●現行法に従いながらも、地方自治体が、愛護動物の「適正飼養」「終生飼養」「繁殖制限」の3本の柱と、「遺棄」「衰弱虐待」「殺傷」犯罪の抑止と執行が行えないとき、条例も必要になります。

●冒頭の参考例などは、「動物が人の役に立ち、人のために働く有体物」とする意味合いの強い、現行法令の焼き直しと判断される内容で、「動物が(一義的に)命ある」とする基本の精神を実行措置とする内容ではありません。
 我が国には、動物が命あるとする「動物基本法」がないので、地方自治の極めて強い裁量が必要なためです。

●また、「動物が(一義的に)命ある」とする条例などを試みるとき、現行法の「動物が命あることに照らし合わせて(鑑みて)」の文章が曖昧すぎるため、「「動物が(一義的に)命ある」とする条例や措置要綱ができていません。

【条例などを制定する自治体の混乱・・・】


 地方自治体の条例や、措置要綱を定めるときに、動物も人の役にたち人のために働く離脱有体物などとする、動物を増やす実業の社会の影響力と、人と動物との適切な関係づくりを目指す思いとの平衡バランスの保たれない時、折角の行政施策の実行や執行に大きな混乱が生まれてしまいます。

 現状の多くの自治体などの施策は、「既に目の前の事態として発生してしまった動物」への、一時しのぎの対策と受け止められます。もっと厳しい観点からは、動物を「人の役に立ち、人のために働く有体物」などとしなければならない、何かしらかの実業を保護し、かばう姿すら見えかくれします。このため、条例制定の根拠法に記載されていて、なおかつ裁量権も使えるので、条例や措置要綱に取り入れ易いにも関わらず、「動物取扱業(動物を実業に供する)」の項目に触れない条例やガイドライン(措置要綱)や提言(以下条例などとします)もあります。


【具体的には・・・】

 冒頭の参考事例から拾い集めると、法令や都条例を根拠にしてもなお且つ、市区町村では行えない事態の項目を見つけるのが困難な条例なども多数です。つまり、敢えて条例などがなくても、市区町村が措置としてさまざまな事柄の行える例です。
 法令や都条例の「動物愛護の精神」を「理念」などに書き換えた条例のため、「動物が命ある」とする場合に動物に対して行ってはならない事柄や、しなければならない事柄などの、緊急で具体的な事態の生じた際に、条例の前段にある既存の法令に従わなければ対処できにくくなります。
 市区町村が遵法の理念を措置とした、「動物が命ある」とする具体的で現実的な行為を決めた項目がないためです。

●動物愛護センターの立地する区があります。「動物が人の役に立ち、人のために働く有体物」とされ、反復継続して繁殖させられながら、やがて「人の役に立たなくなった」と判断された者から、致死処分のために持ち込まれる余剰動物がいます。また、区内では、動物を用いた事業が営まれ、特定(危険)動物とされる動物も、多数扱われ飼われており、見捨てられ、徘徊する動物もいます。
 条例では、センターへ持ち込む行為を強く防ぎながら、見捨てられる動物をなくし、動物を致死処分にしない具体的な行政措置の制定が可能ですが、人の行為に対する規制事項などは、条例に盛り込まれていません。

●法令制定の際に、学識有識者などで構成される審議会や検討会などと同じに、「動物が人の役に立ち、人のために働く有体物」とする考えが用いられるためと考えられます。
 目の前に、何らかの目的で既に増やされてしまった動物へ「動物が命ある」と思い行う区民の気持ちを、行政が守りかばう精神は尊重されたものの、余剰と呼ばれたり徘徊してしまう動物や、災害時の危険動物を含む、動物が人を侵す恐れを発生させる「人の作為」を、前もって防ぐ具体的な事項が定められていないためです。

[※参考頁]
条例制定計画の一般的なサンプルレター(過去ログより)
http://www.dobutu.net/qa_joreian.html

条例制定計画に際しての解説頁(関連グループ頁・過去ログより)
http://www.nekodasuke.net/qa_setagaya_jorei.html

「世田谷区における人と動物との共生に関する考え方」計画への提案書(過去ログより)
.pdf A4サイズ4頁 20k
http://www.dobutu.net/pdf/setagaya_jorei.pdf

●【犬とねこの例をいくつか拾ってみます・・・】

◆さまざまな条例などの項目に混乱が生じているなかでも、顕著な項目の一つに「外に出たねこのトイレの躾」の規定が一例にあげられます。
 ねこが命あるものであり、その生態、習性、生理、本能などに配慮するとき、外に出るねこのトイレの躾や、それに伴う手綱などは現実的なのでしょうか?

◆一義的に命あるとする際の1頭の動物を、その置かれる立場によって更に細分化して、飼い猫や野良猫のほかさまざまな呼び名を付けてしまうことにより、その都度、細分化された立場のねこに係わる者にしか対応できないガイドラインもあります。
 1頭のねこの置かれる立場によって、人の行う保護や管理の方法が異なってしまうため、ひとつの動物に対する人の行いの、公平で公益的な整合性が保てません。

◆ねこの登録制度に関わる条例や措置も多くなっています。
 昭和25から施行されている狂犬病予防法による、犬の登録制度の実行や執行が、一説には50%程度といわれているにも関わらず、ねこの登録制度を地方自治が定めても、果たして実行や執行ができるものなのでしょうか??また、犬の登録が既に50%を超えているとしたところで、鑑札票装着の実行と、装着違反の執行はどうなのでしょうか?
 厚生省所管の犬に関する法令を、環境省所管の愛護動物の条例に統合しながら、犬の登録と鑑札を盛り込まない条例も施行されています。これら上記の事例は、動物を実業に供する立場からの見解にかたよるためと思われます。
 大型犬と同じサイズの鑑札の小型犬への装着を「現実的」ではないという意見を耳にしますが、適切なサイズに法の実施細目を変える目的の求めも聞いたことがありません。一足飛びにマイクロチップの埋め込みが提案されているようです。鑑札は民間人にも装着できますが、埋め込みは装着技術費用が発生するため、公共性に乏しくなってしまいます。

[※参考頁]致死処分の犬を出さないために・・・
http://awn.sub.jp/awn/pf/hocard.html

◆犬の登録鑑札装着などの実行や執行の行政不作為(法令にありながら、地方自治が行わない事態)から、不幸にも見捨てられた犬の保護や救済の設備の維持を「動物が命あるもの」と考える、国民の行為に委ねることを、法施行時の付帯決議から読み進んでしまう危険性があります。
 万事やむを得ない事態によって、緊急避難的な所有権の放棄により引き取られた犬やねこに、生存の機会を与える地方自治体の行政措置は、法令順守のもとで、条例などがなくてもできることだからです。

◆動物愛護を思う国民を守りかばう、地方自治の気持ちと実行の混乱
 既に人の助けを求め始めた動物に対して「動物が(一義的に)命ある」と思う、極めて限られた市区町村民(以下、市民とします。)の行う、限られた事態に直面した作為を守りかばおうとする措置要綱や提言もあります。
 このことは、「動物が(一義的に)命ある」とする精神の具体的な現れとも思われてしまいますが、市民の公平な公共性を思いすすめる際には、一部の市民の気持ちから来る行動を、行政が部分的に享受することとなり、ひっくり返すと、それらの行動を強いられる立場の限られた市民の生活権利を侵す恐れも含みます。
 近年では1頭の動物の終生飼養費用を定めた実業のビジネスも行われています。一方で、放置放浪動物や余剰動物の保護や管理あるいは譲渡に関わる行いなどを、行政施策として市民の任意の行為にゆだねる措置なども出始めました。実業と動物愛護精神の整合性の不釣り合いから来る混乱です。市民の任意の行動を、行政の施策措置と位置付ける混乱です。善意に起因する任意の行為は、既に行政力を超える社会貢献行動と思われるからです。

 行政も市民も同じ目的で協力し、地域社会が望む環境保全などを目指そうとする「協働」事業に、一定の動物の擁護や救済に関わる、特定の区民の活動を組み込む自治体もありますが、こと愛護動物問題は、その適切な意識定着と合意形成までの時間も必要と考えられています。

 また、地域住環境保全の位置付けから、人を動物が侵す恐れを前もって防ぎながら、動物が人によって侵害される事態を防ぐための、愛護動物問題への地域ぐるみの取り組みを「協働」の仕組みを利用しながら、条例や措置要綱を定めないなかでも行われ始めています。

●【なぜ、混乱が起こってしまうのか?・・・】
 人の手から放された動物の擁護と、動物を扱いあるいは飼う者の責務という2つのポイントに加えて、「動物が人の役に立ち、人のために働く有体物」とする基本姿勢に、すべての住民に対する公平で合理的な整合性が果たされないためです。

 生物多様性と人と環境の関係の中で叫ばれている「侵害する恐れのある生物の発生を、前もって抑止する」などの、現行法上の本質的なポイントを、適切に判断して行うことも大事になります。
 今生きている動物を排除することなく、人への侵害をなくすことは現行法上でも可能です。
 但し、動物基本法がないため、「動物が命ある」ので、その健康や福祉なども保証されるとする根拠法は希薄です。動物の健康維持や福祉の向上は、地方自治の裁量に委ねられてしまいますが、「動物が命ある」とする法の精神を具体的に取り入れる自治体もありません。
 動物の健康や福祉などが、自治体職員の任意の裁量で行われることもありますが、人への侵害苦情対策として、法を超えた措置ともいわれる駆除や排除の行われることの多いのも現実です。

 例えば次のことがらも、「動物が命ある」とする法の精神に準拠した条例なればこそ、具体的な事項を決められる項目の、ほんの一例です。
●実験などやそのほかに愛護動物を供する事態を禁止する条例
●適正な終生飼養を徹底する条例
●適切な終生飼養目的以外へ、愛護動物の譲渡を禁止する条例
●動物個体の反復する繁殖を抑止する条例
●繁殖する者と、譲渡する者を兼ねさせない条例
●動物の展示や陳列を禁止する条例
●万事やむを得ない事態の緊急避難的な所有権の放棄に伴う、動物の飼養の継続の施設に関する条例
●犯罪や遺棄該当動物の保管や飼養の施設に関する条例
●緊急災害時の動物の保管や飼養の施設に関する条例
 …などなどやそのほか、動物を「人の役に立ち、人のために働く離脱有体物」とみなした際にすら、人と動物との適切な関係づくりをはかる目的の、人の作為に対して地方自治で制定する条例項目は、現行法令を根拠にしても、上記のほかにも多岐に及びます。

 「動物が命る」という精神を保つ際の条例は、さらに厳しいものになると考えられます。
【例えば・・】
●動物との共生を望み、飼いあるいは扱う者は、前もって、市区町村長などが別途定める、動物の生態・習性・生理・本能・その他のあらゆる知識の習得と、動物の保護及び管理に関わる技術などの認定と許可を受けなければならない。・・・、とする条例


【動物愛護管理法公布時の議会付帯決議の、条例などにも影響する大きなポイント】
 「動物が人の役に立ち、人のために働く有体物」とする立場があるとする条件の中で、その行為に対する厳しく強い規制を、国が地方自治に求めています。(※付帯決議より項目抜粋: 3規則に営業(業務)停止に係る命令等の措置を加えることについては、問題発生の実態等を踏まえ、その必要性や有効性を含め検討を行うこと。)

●国全体を画一的に統制すると、社会に大きな混乱が避けられないので、地方自治の裁量で厳しくできる際には、そうしてもよいのです。
 東京都や福岡市では、動物取り扱い業という分野を定めた上で、動物愛護管理法の「届け出」制度よりもワンランク上の「登録制度」を取り入れました。しかし、許認可制度になっていませんし、某海外法のように「1腹(同じ1頭)から所定の回数(例:2回)の繁殖行為者を事業者とする。」などの規制もありません。

●愛護動物の陳列や展示、飼養や保管やそのほかの極めて厳しい規制を、どのような立場であっても責務にすることが条例では可能です。
 「適正飼養」「終生飼養」「繁殖制限」の柱を、愛護動物に接するすべての者(実業も含む)に当てはめられるのです。

●行政に、動物擁護を精神とする区民寄りの意識の強いとき、既に社会に供され、一般区民が目の当たりにし、飼養などに関わる、いわゆる目の前に存在する愛玩動物対策にかたより、「すべての飼い扱う者」つまり実業への対策の省かれてしまう恐れもあります。
 そのため、動物の陳列や展示そのほかに供されることに起因し派生する余剰動物ですら、その処遇を「動物が(一義的に)命ある」として擁護を思う、一部の住民に委ねる提言もされています。

【終りに・・・】

 動物の命の権利擁護と、動物を実業に用いる人間の権利主張のバランスが保たれないため、動物の適切な愛護や管理を試みる多くの国民との整合性がはかりにくくなっています。

 「動物が命ある」と思いながら、動物の健康や福祉の保持に進む者たちの、行動や精神をかばい、守ることは行政の努めとされますが、まずその前に、健康や福祉の保たれない動物を発生させる、動物を占有あるいは所有するすべての人の不適切な作為を、地方自治が厳しく治めなければ、公平で公共的な住民間の整合性も保たれません。一時しのぎの対処療法的な対策がほとんどのため、人と人とのトラブルを誘発してしまいます。

 規制の緩和が進められているさまざまな実業の社会にあって、こと動物に関しては、取り扱いあるいは飼う者に対する厳しい規制が求められています。

 条例などに地域行政内の混乱もみられますが、そのための所管を置く自治体が「先進的」といわれ高く評価されるほど、国内の動物愛護事情は立ち後れています。行政内に担当職員を置くことや、法令等の適切な実行システムを求める社会の意識も定着していません。
 このため、法令になどに準拠した適切な主務所管を置かないなかで、動物からの侵害苦情対策にあたっている地方自治もたくさんあります。
 主務所管を置かない中での、法令の実行や執行は心もとなく、行ってはならない「法を超えた措置」が見逃されるため、行政に市民から疑義の提示される事態も多数あります。



主務所管を置かない地方自治に対して、地域条件に配慮した個別事例に従い、所管を置くことを求めるサンプルレター

●主務所管設置のお願い(.pdf A4判 4k)
http://awn.sub.jp/awn/pf_negai/shokansetinegai.pdf

●地域協働動物愛護プラン推進のお願い(.pdf A4判 8k)
http://awn.sub.jp/awn/pf_negai/itkw_negai.pdf


【動物愛護管理法の見直しについて】
http://www.dobutu.net/qa/qa_ho_naosi.html


【環境省/動物の愛護・管理について】
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/index.html

 



2005.02.(無断転載はご容赦ください。)

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